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インド高額紙幣廃止で進むキャッシュレス化、注目の5つの決済システムを解説



こんにちは。不動産担保ローンの日宝です。
先日、第89回アカデミー賞の候補が発表されました。長編アニメーション部門では、スタジオジブリの「レッドタートル ある島の物語」がノミネートされたそうです。受賞となれば、「千と千尋の神隠し」以来の快挙ですね。
さて、今日はインドの高額紙幣廃止について触れてみたいと思います。

インド高額紙幣廃止で進むキャッシュレス化、注目の5つの決済システムを解説

2016年11月8日、インドのモディ首相は高額紙幣廃止の声明を発表した。新紙幣への交換にかかる負担をはじめとし、現在もインドの日常社会に深刻な影響を与えている。しかし、裏を返せばこれは現金決済中心の社会からキャッシュレス社会へ脱皮する千載一遇の機会でもあり、官民挙げたIT開発や啓蒙活動が行われている。今回は前回に引き続き、インドの高額紙幣廃止を取り上げ、急速な広がりを見せている支払・決済のIT対応の最新動向をエクシール・エフ・エー・コンサルティングの現地コンサルタント、ガガン・パラシャーが解説する。

■「攻め」のキャッシュレス化を目指すインド政府
インド政府は、旧高額紙幣を廃止し、デジタル決済のための環境づくりを進めている。モディ首相の肝いりで州政府の発言力が強まった「国策のシンクタンク」である政策委員会は、現金を介さない金融取引に対応するツールの実用化を示達した。こうしたツールは以前から多く世に出ているが、銀行、その他の金融業者は、これらの拡大に一段と重きを置くようになった。

 こうした金融技術は、プライベートな送金を受け取る人のみならず、商業目的の事業者にとっても取引の利便性を向上させることが目的だ。事業者は大小問わず、このアプローチに興味津々である。小規模ビジネスや個人事業主といったインフォーマルな世界の人々は、高額紙幣の廃止の最大の被害者と考えられたが、IT関係省庁もメンバーであるインド政府の諮問委員会は、銀行口座を持っている人なら誰でも現金なしで決済できるツールを特定した。
■eコマース事業者に広まるPOS端末

インド準備銀行によれば、インドでは約7億5000万枚のデビット/クレジットカードが使われているが、そのうちの7億2000万枚程度はデビットカードである。こうしたカードの多くは口座引落や代金決済に使用されている。通常、決済の多くはPOS端末を持つ事業者に対し、デビット/クレジットカードで行うことができる。このため、POS端末は政府にとって、特に地方の村落においては重要視されている。
 事業者は、口座を持つ銀行、またはその銀行の代理として位置づけられるサービスプロバイダーから提供されたPOS端末を、それらの機関の助けを借りて設置することができる。銀行はPOS端末を事業者に無償で提供するが、インド準備銀行が定める割引率(Merchant Discount Rate)で事業者の売上に課金する。銀行などのこうした貸付業者が事業者に端末を提供するかどうかの条件は、貸付業者により異なる。

 POS端末は、当初とても大ぶりで重いものだったが、今や全国的にポケットサイズ端末が普及しつつある。輸入市場の新たな拡大とともに、端末もインドの銀行事情を反映した仕様で製造されてきている。端末の種類には、デスクトップ型とポータブル型がある。どちらもデータ伝送技術にGPRSを用いておりSIMカード経由でネットワークと接続するが、デスクトップ型は電源を必要とするのに対し、ポータブル型はバッテリーを内蔵している。また、1,500ルピー(約2,500円)から6,000ルピー(約1万円)の価格で手に入るモバイルPOS端末は、注文を配送する際にデビット/クレジットカードで決済するeコマース事業者の間で広まっている。

■決済サービスの主導権を握ろうとするUPI
インド決済公社NPCI(The National Payments Corporation of India)は昨年4月に UPI (Unified Payments Interface:統合決済インターフェース)のサービスを開始、決済サービスの主導権を握ろうとした。しかし、モディ首相が主導した11月8日の高額紙幣廃止以降に政府や関係閣僚が新たな枠組みを推し進めたため、一部の大手銀行の取引を取り込むには至らなかった。UPIはインドの即時振込サービス(IMPS) を用いて頻繁に2行間資金移動を行うのが基本だ。異なる仕様の電子財布の相互利用が実現していないインドでは、UPIは普遍性で優れている。たとえば、電子財布のPaytmからFreeChargeへの送金は不可能だが、UPIでは、このようなことはない。
 UPIのユーザーは、決済用のアドレスを作成するため指定の銀行のアプリをダウンロードする必要がある。なお現在、アプリはAndroid端末にのみ対応している。この決済用アドレスは電子メールアドレスのような単純なもので、ユーザー名@銀行名といったようなものだ。ユーザー登録には、決済用アドレスに加えて、銀行から無作為の7桁の数字のモバイル通貨ID(MMID)を発行してもらう必要がある。そして、送金を受けるにはMMIDと決済用アドレスを特定する必要があるのだ。
 MMIDの設定手続きについては、少し面倒な銀行もあれば、銀行指定の番号にショートメール(SMS)を送るだけで可能な銀行もある。他のUPIの利用例としては、インド第2位の市中銀行ICICIで、カメラ付携帯電話をQRコードにかざすことで送金受取人が認証できるため、本人認証に必要な詳細情報の入力が不要となるサービスもある。

■フィーチャーフォンでも取引可能なUSSD
USSD(Unstructured Supplementary Service Data、携帯端末のダイヤル操作でメッセージが交換可能な技術)は、単独または複数の銀行口座に携帯電話番号を登録することで初めて決済に適用可能となる。携帯端末で「*99#」と入力すると、登録している銀行の、名称(または略称)の最初の3文字かIFSC(銀行名・支店名を特定するインド独自のコード)の最初の4文字の入力を求められる。インドステイト銀行であれば「sbi」、ビーカーネール&ジャイプールステイト銀行であれば「sbj」、ICICI銀行であれば「ici」といった具合だ。次に、残高照会か振込かを選択する画面が出る。残高照会は単純だが、振込にはUPIと同様にMMIDが必要だ。National Unified USSD Platform としても知られているUSSDのバンキングサービスは、英語以外の11の言語で利用可能である。
 インド政府は旧高額紙幣の廃止を急ピッチで進めたが、キャッシュレス金融取引の多くはスマホの使用が欠かせない。ところが、USSDの手法だと音声ネットワークあるいはインターネットに接続しないフィーチャーフォンでも取引が可能である。銀行口座の残高照会に限れば、携帯電話のプリペイド残高をチェックするように簡単だ。

■国民ID「アドハー」を利用した決済システム
インドの個人IDであるアドハー(Aadhaar)は、銀行をまたぐ取引の共通プラットフォームとして利用されている。AEPS(Aadhaar Enabled Payment System)は、アドハーカード保有者が、ID番号と銀行口座を対応させて利用するものだ。アドハーカードが、あたかもデビットカードのようになり得るわけだ。この決済システムでは、小売価格で2,000~4,000ルピー(約3,400~6,800円)で手に入る指紋認証リーダーが用いられる。さらに、決済を受けつける小売事業者用に銀行が提供するソフトウェアも必要だ。
 モバイルアプリと併用することで、これらの機器は一般顧客の生体データを認証し、アドハーによる資金決済を可能とする。また、銀行と提携した第三者がアドハーのデータベースにアクセスし決済サービスを行うアプリも市販されている。この決済方式は特に、モバイル/データサービスの利用が限られている周辺地域の政府で推奨されている。AEPSでは、オペレーション部分は小売事業者が取り扱うため、消費者はアドハー番号と銀行口座の紐つけさえすれば、資金移動、残高照会、預入/引出、銀行間取引が可能なのである。

■高額紙幣廃止で急速に伸びる電子財布
数年前のインドでは、電子/モバイル財布について気に留める人は誰もいなかった。それが今、非常に注目されている。当面、インドは通貨の流通が不便な状況に直面し続けるだろうが、不便さはモバイル財布によって軽減されている。モバイル財布は定期的にディスカウントやキャッシュバックポイントを付与しているため、ユーザーに人気がある。
 昨年11月8日の旧高額紙幣廃止の声明以来、電子/モバイル財布の利用の伸びは目覚ましいものがある。インドの電子財布Paytmでの取引量は、取引ニーズが跳ね上がったおかげで昨年11月10日には1日で1000%の増加を見せた。運営事業者が力を入れている都市部やその周辺地域では電子財布の利用が広まり、利便性を増している。運営事業者のシステムを経由して銀行のシステムで支払処理が行われ、電子財布は日常生活では実際の財布と同様の役割を果たしている。一般消費者の立場では、Paytm、Mobikwik、FreeCharge、Oxigenなどの業者の電子財布もしくはプリペイド決済手段は、主にモバイル機器のリチャージや水道光熱費の請求の支払に利用することができる。しかし、それどころか今や、自動車道の料金支払所、地下鉄メトロの駅、ガソリンスタンドでも利用できるまでに広がりを見せている。 インドで旧高額紙幣廃止後、電子財布が爆発的に普及するにつれて、利用者にとって重要になるのは、Google Play、App Store、その他の信頼できる電子財布サービス業者から関連アプリを携帯電話にダウンロードすることだ。特に電子財布を初めて利用するユーザーは、信頼できる業者の見極めに要注意だ。いくつかの電子財布は、インド国内の複数の言語に対応可能である。
 電子財布を使うには、インターネットに接続可能なスマホが必要だ。公的銀行や民間銀行の中には、SBI BuddyやICICI Pocketなどのように、決済目的の電子財布を提供している例がある。電子財布を始めるには、メールアドレス、携帯電話番号のような基本的な個人情報を提示する必要がある。始めてしまえば、デビットカード、クレジットカード、ネットバンキングで電子財布に資金を入金できる。銀行が提供する電子財布を利用する場合、銀行口座と電子財布が接続されていれば、電子財布への資金補充は一段と簡単になる。インド準備銀行が公表した最新の情報では、1人当たり月に2万ルピー(約3万4,000円)の上限付きで電子財布への入金が可能である。しかし、電子財布業者に、より多くの個人属性情報を提供すればこの上限は撤廃される。また、1%の手数料で、電子財布に入金後ふたたび銀行口座に資金を戻すこともできる。
 インドは、キャッシュレス社会を標榜し、発展の途上であるが、キャッシュレスとは、現金が流通しない社会をいうのではなく、人々が電子財布のような他の支払手段を利用できる社会を指す。旧高額紙幣廃止の後、インドは大きな変化に直面しており、エリートから貧困層までのあらゆる国民が、インド経済の成長・変化・変革の目撃者だ。インド国民が腐敗のない収益を上げるクリーンな経済の実現にインド政府は自信を持っており、歩みを止めるつもりはない。旧高額紙幣廃止のおかげで、テクノロジーおよびその利用において、この上ないほどの変化が見られ、現在も継続中だ。インド社会はモディ首相に絶大な信頼を置いているため、日々の生活は非常に不便ながらも、現金社会からキャッシュレス社会へと変貌している最中だ。

ビジネス+IT 2017年01月16日配信 インド高額紙幣廃止で進むキャッシュレス化、注目の5つの決済システムを解説 より引用


高額紙幣の廃止は、世界的な流れでもあります。欧州中央銀行(ECB)は2018年に500ユーロ(約6万円)札の印刷を停止すると発表しています。また、カナダやシンガポールも段階的に高額紙幣の流通を減らしているそうです。フィリピンやデンマークなどでは、規制を変更して電子決済への切り替えを促進しています。
しかしながら、インドでは高額紙幣廃止によって、貧困層に悪影響が出ているとの報告もあるそうです。賃金が現金で支払われる不定期かつ非正規の仕事に頼る人が多く、現金の必要性が高いと考えられます。
Fintechに見られる、テクノロジーの進化も世界的なキャッシュレス化を後押ししています。
Apple Payや昨年12月にスタートしたAndroid Payのような、スマートフォンを利用した決済は、現金を介さない少額取引を容易にしました。今後もますます発展していくことが予想されています。
2020年の東京オリンピックでは、外国人観光客の方々が現金を両替することなく、スマートフォンだけで食事をしたり、ショッピングができるようになっていることを期待したいですね。


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